1982 Janine

1982 Janine

パブリッシャー
Viking Adult
価格: ¥1,534

1982 Janineのレビュー

作家本人のお気に入り
星4.5。なんとも評価が難しい本だ。Gray本人の自作の中で一番のお気に入りらしい。各種の評にあるような難解な小説ではない。前半の三文ポルノグラフィーのような部分が、意味もなく長すぎるような気がする。また、政治がらみの部分はスコットランド固有の問題を取り扱っているためになじみがないことと、さすがに古さが否めない。それでも実際の叙述の過半数を占める主人公の学生自体の狂おしい恋愛と、その当時は理解できなかった愛と、失われた未来の可能性についての部分は心を離れない。ある意味、Lanarkより直接的で整理されているし、主人公の設定も極端ではない。全体的には、男やもめでアル中の中年男が、自殺を図ったあとに、middle age crisisを脱する物語と読める。前半部は、この男が三文ポルノグラフィーを自分の頭の中で夢想しているところに、過去の痛々しい記憶が忍び込んでくる形式をもつ。全体の半ばで、睡眠薬を大量に飲んで自殺を図ろうとした後、逆に頭が冴えたのか、明快な叙述で学生自体の出来事が語られる。読む価値は十分にある。しかし、Grayを最初に読もうという方は、Poor Things、Lanark、あるいはUnlikely stories, mostlyをお勧めする。ただ、この小説も前半部を越えれば、相当にストレートである。海外の評を見るといろいろ書かれているが、実際にはこの小説に限らずGrayの小説は基本的にストレートだと思う。